はじめに:最近、急に増えたように見えませんか?
ここ数年、一般的な話として
「メンタル不調で休職」「Aさんが突然職場に来なくなった」「Bさんはあのプロジェクトで燃え尽きたようだ」
といった話を耳にする機会が増えました。
ニュースやSNSでは、
まるで最近になってこのようなことが急増したかのように語られることも多いですが、
筆者が40代のシステムエンジニアとして現場を見ている感じだと、少し違う印象を持ちます。
増えたというより、見えるようになった。
これが正直な感覚です。
ITの現場でも、
ずっと水面下で抱えられていた問題が、
あるタイミングで一気に表に出ることは珍しくありません。
なぜ職場のメンタル不調が目立つようになったのか?
① 「頑張れば何とかなる」が通用しなくなった
以前は、
- 忙しいのは一時的
- ここを乗り切れば楽になる
- 若いうちは無理がきく
そんな前提が、どこかにありました。
しかし、
仕事の量もスピードも落ちないまま、
「常に高負荷」が続く環境では、心も体も持ちません。
SE的に言えば、
常時100%近いCPU使用率で回し続けている状態です。
いつ落ちてもおかしくありません。
筆者の職場も忙しい忙しくないの波はありますが、社員100名の誰かから常に問い合わせがあるわけで、だいたいはくたばりそうなくらい忙しいです。
② 働き方が変わり、孤立しやすくなった
リモートワークや分散勤務は、
確かに便利になりました。
一方で、
- 雑談が減った
- 表情が見えない
- 異変に気づきにくい
という側面もあります。
以前なら、
「今日は元気ないな」と気づけたことが、
チャット越しでは分かりません。
不調が表に出る頃には、
すでに限界を超えているケースも多いです。
③ 評価が数字に寄りすぎている
成果が見えること自体は悪くありません。
ただ、
- 数値
- 期限
- KPI
こうした指標だけで評価される環境では、
過程や余白が削られていきます。
ITで言えば、
動いているかどうかだけを見て、
内部の負荷を無視している状態です。
SE視点で見る「メンタル不調が起きやすい職場」の特徴
ここからは、少し構造的に見てみます。
● 負荷の可視化がされていない
誰がどれだけ抱えているのか、
正確に把握されていない。
「忙しそうだけど、本人が大丈夫と言っているから」
この判断は、かなり危険です。
システムなら、
必ずメトリクスを取ります。
人も同じはずです。
● 相談が「個人の問題」になっている
不調を訴えると、
- 弱いと思われる
- 評価が下がる
- 迷惑をかける
そう感じてしまい、
誰にも言えなくなる。
結果として、
限界まで溜め込む構造ができあがります。
● 休むことが“特別扱い”になっている
「休職」という言葉が重すぎる。
本来は、体調不良と同じはずなのに、
なぜか特別な出来事として扱われがちです。
SE視点では、
一時的なメンテナンスに過ぎません。
筆者の職場でも仕事ができる人ほど、残業が少なく、メンタルが少しでもやられてしまったと思ったら、そのことを上司に報告し、自分を守ろうとしています。
メンタル不調は「個人の弱さ」ではない
ここは強調したいところです。
メンタル不調は、
- 根性が足りない
- 気持ちの問題
- 向いていない
といった話ではありません。
設計上、
無理が続く構造になっていれば、
誰でも調子を崩します。
ITの世界で言えば、
落ちるべくして落ちたシステムです。
どうすれば職場のメンタル不調は減らせるのか?
① 負荷を“見える形”にする
- 業務量
- 残業時間
- 対応件数
完璧でなくても構いません。
まずは把握することが第一歩です。
② 早めに「休む選択肢」を出す
完全に動けなくなる前に、
少し立ち止まる。
これは甘えではなく、
長く働くための判断です。
結果的に効率的な働き方になり、自分にとっても周りにとっても良い結果を生み出します。
③ 不調を話しても不利にならない空気を作る
制度だけあっても、
使えなければ意味がありません。
- 上司がどう振る舞うか
- 周囲がどう受け止めるか
ここが一番の分かれ目です。
ちなみに筆者の上司は、部下を守ってくれないということで部署内からは不満爆発ですが、こういったことから、自分の周りの人を守ることがいかに大事かということを理解するきっかけになりました。
まとめ:メンタル不調は“早期検知”できる問題
- 最近増えたように見えるのは、表に出てきただけ
- 高負荷・孤立・評価の偏りが重なっている
- SE視点では、設計と運用の問題
- 我慢よりも、早めのメンテナンスが重要
心も体も、
壊れてから直すのは大変です。
だからこそ、
「まだ大丈夫なうち」に手を打てる職場が、
これからは求められていくのだと思います。