はじめに:最近やたら多くないですか?
ここ最近、ニュースを見ていると
「水道管が破裂」「広範囲で停電」「通信障害が発生」といった話題をよく目にします。
特に目立つのが地方です。
都市部よりも復旧に時間がかかり、生活への影響も大きい。
40代で地方に住むシステムエンジニアである筆者がこの状況を見るかぎり、
正直なところ「これは偶然じゃないな」と強く感じます。
ITの現場で起きるシステム障害と、構造が驚くほど似ているからです。
この記事では、
なぜ地方でインフラトラブルが増えているのかを整理しつつ、
SE視点でその背景と現実的な対策について考えてみます。
なぜ地方でインフラトラブルが増えているのか?
① 設備の老朽化が限界に来ている
地方のインフラ設備の多くは、
高度経済成長期に整備されたものです。
水道管、橋、電柱、通信設備など、
すでに想定された耐用年数を超えて使われているケースも珍しくありません。
しかし現実問題として、
- まだ使えている
- 止めると影響が大きい
- 更新する予算がない
こうした理由で、延命に延命を重ねてきました。
SE的に言えば、
レガシーシステムを無理やり保守し続けている状態です。
「いつか壊れる」と分かっているのだけれども、
業務が止まるのが怖くて手を付けられない。
この心理、現場経験のある人なら分かると思います。
人間は保守的な生き物で、今までのやり方を変えたくないという気持ちはある意味本能的なものではありますが、そのままではよくないというのは火を見るより明らかなことですよね。
② 保守を担う人材が足りない
インフラトラブルの背景には、人の問題もあります。
地方では、
- 技術を知っている人が高齢化
- 若手が入ってこない
- 引き継ぎが十分に行われていない
といった状況が進んでいます。
結果として、
- 「この設備は〇〇さんしか分からない」
- 「資料がなく、口伝え」
- 「トラブル時はとりあえず電話」
という状態になりがちです。
SE視点で言えば、
属人化の極みです。
その担当者が休んだり引退したりすると、
一気にリスクが表面化します。
筆者は社内SEとして、150人程度の社員のPCやスマホ、利用しているシステムの”面倒”を見ていますが、
他にそれがわかる人がおらず、まさに属人化の極みです。
これからどうなっていくのでしょうか…(汗)
③ 予算が“事後対応型”になっている
地方自治体の予算配分を見ると、
どうしても「壊れてから直す」形になりやすいです。
- 予防保全は評価されにくい
- 問題が起きてからでないと予算が通らない
- 目に見える成果が出にくい
結果として、
トラブルが起きるまで放置される構造ができあがります。
ITの現場で例えるなら、
障害が起きてからチケットが切られる
監視強化は後回し
という、あの感じです。
SE視点で見る「インフラ障害の共通点」
地方インフラのトラブルを見ていると、
ITシステムの障害対応と重なる点がいくつもあります。
● ログが十分に取れていない
設備の状態が数字やデータで把握されておらず、
「なんとなく大丈夫」で運用されているケースが多い。
異常が起きてから初めて問題に気づく。
これは障害対応で一番つらいパターンです。
● 監視が後手に回っている
24時間監視や定期チェックが十分でなく、
異変の兆候を見逃しがち。
本来であれば、
- 振動
- 圧力
- 温度
- 通信状況
などを継続的に見ていれば、
「予兆」は必ず出ます。
● 冗長化されていない
地方ほど、代替手段が少ない。
- 1本の水道管
- 1系統の通信回線
- 1つの変電設備
どれかが止まると、即アウトです。
SEなら真っ先に
「そこ、シングルポイントですよね?」
と言いたくなる構成です。
社内SEの属人化の問題も、引継ぎをしたりして、同じことができる人を複数もうけることによって
冗長化対策ができますね。
● 担当者が固定されている
「いつもの人が見る」
「分かる人が対応する」
これもよくある話ですが、
リスクとしては非常に高い。
人はいつまでも同じ場所にいません。
私の経験上、担当者が正確に固定されているのであれば良い方で、なんでもかんでも同じ人が面倒を見てくれる、わかってくれるということでどんな業務も振られてしまう社内SEは悲惨です。
私たちの生活にどんな影響が出るのか?
インフラトラブルは、
ニュースで見るよりもずっと身近です。
- 水が出ない
- ネットが使えない
- 電話がつながらない
特に地方では、
- 高齢者の生活
- 医療や福祉
- 学校や行政
への影響が大きくなります。
復旧までに時間がかかるのも地方の特徴です。
人も設備も限られているため、
都市部のように「すぐ直る」とはいきません。
今後どうすればいいのか?現実的な視点で考える
① すべてを新しくするのは現実的ではない
正直なところ、
インフラを一気に刷新するのは無理です。
予算も人も足りません。
お金ができたら、新しい人が入ってきたら、と言っていたらすべては先延ばしです。
② まずは「見える化」から始める
ただし、できることはあります。
- 点検結果のデータ化
- 状態の数値管理
- 過去トラブルの蓄積
これはITの世界では当たり前の考え方です。
全部直す前に、
どこが危ないかを把握することが重要です。
③ ITの考え方は社会インフラにも使える
- 属人化を減らす
- 手順を共有する
- 情報をオープンにする
こうした取り組みは、
インフラ分野でも十分に活かせます。
住民への情報共有もその一つです。
「知らなかった」が一番の混乱を生みます。
まとめ:インフラトラブルは“偶然”ではない
- 地方でトラブルが増えているのは構造的な問題
- 老朽化・人手不足・予算の使い方が重なっている
- SE視点で見ると、よくある失敗の積み重ね
- だからこそ、早めの対策と見える化が重要
インフラは、
普段は意識しなくても生活を支えてくれています。
壊れてから慌てるのではなく、
壊れにくい仕組みを作る。
ITも社会インフラも、
本質はそこまで変わらないのかもしれません。